こちらも当初から問題視されていたプルトニウム汚染ですが、大分資料が出来てきましたので掲載します。

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参考資料
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_FukushimaNPP/0002/5600_0930.pdf (P8 Fukushima)
http://www-pub.iaea.org/mtcd/publications/pdf/pub1239_web.pdf (P147 Chernobyl)
今回文科省の調査結果を見る限り、チェルノブイリにおける最低ラインの閾値である100Bq/m2以上の汚染が見あたらなかった為、上のような図になりました。
そもそもプルトニウムは冷戦時代の大気圏核実験によって降下したものもあり、日本では最高で220Bq/m2を検出した場所もあるそうです(文科省資料参照)。今回の調査においては、最高値は15Bq/m2と、大気圏核実験による最高値よりも低い結果となりました。科学的にこれらが福島産のものかどうかというのは、プルトニウムの比率によって、どうもそうらしいと分かるレベルらしく、では健康への影響はという問いには、核実験によって降下したもの以上の健康的影響はないと言って良いかと思います。
「プルトニウム2万3000倍」のエントリーにおいて、今回の福島原発における放射性核種の放出量のシミュレーション値が書いてありますが、ストロンチウムもそうですが、どうもこのシミュレーション値よりも実際の陸地への沈着汚染が低いような感じがします。例えばストロンチウム90は福島ではシミュレーション上は140兆ベクレルも放出している訳でして、チェルノブイリのプルトニウム239、240の合計値である30兆ベクレルより多い訳です。であるならば、少なくともストロンチウム90の地図はチェルノブイリのプルトニウム239,240地図よりも重い汚染地図になっても良さそうなものです。チェルノブイリのプルトニウム地図では上記のように40万Bq/m2以上の地域もあります。
これまた素人考えですが、恐らくこの違いは炉が爆発したか、しないかの違いなのではないかと思います。チェルノブイリの南西に見られる所謂レッドフォレストと呼ばれる高濃度汚染地域は爆散した燃料が飛び散った場所と言われており、ガスになって浮遊したというよりも、多くの放射性物質が爆発の影響で放物線を描いて飛んできたのでしょう。特に上記のプルトニウムの汚染地域をよく観察すれば顕著にその特徴が出ています。原発から約数キロの範囲であるレッドフォレストは40万Bq/m2以上という高濃度汚染地域なのに比較してほんの20kmも南西に行けばたった100Bq/m2以下の地域になり、比率4000分の1という非常に顕著な落差が現れてます。セシウムやストロンチウムに関しては2000万Bq/m2から4万Bq/m2以下というように比率は500分の1であり、また広範囲な地図になればセシウムやストロンチウムはプルトニウムよりも遙か遠くに飛んでいることがわかります。逆に以下の地図に表すようにプルトニウム3700Bq/m2以上の地域は30km圏内にほぼ収まり、セシウム等のように遠い場所にホットスポットを作らなかったそうです。

福島のストロンチウムの飛散に関してはまず第1に、シミュレーション上の放出では計れない原発施設内での沈着、要は建屋の壁に沈着したり等でシミュレーションの値よりも激減し、そしてチェルノブイリにおけるプルトニウムの地図と全く違い、非常に薄く広く飛んだものと考えるのが自然かもしれません。プルトニウムの飛散に関してもガスと一緒に運良く飛んだものもあるでしょうが、それでも殆どがふるい落とされて、最終的には核実験時に降下したものと見分けが付かない程の濃度しか飛ばなかったというのが真相ではないでしょうか。
蛇足になりますが、よく「プルトニウムは飛ばないなんて嘘だ!核実験で飛んできたじゃないか!」という論を見掛けますが、、核実験の爆発力はチェルノブイリの爆発や福島の水素爆発などとは比較にならない程のものです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%83%90
ノバヤゼムリャで行われたツァーリボンバ(皇帝の爆弾)では中間圏である高度60kmのキノコ雲が、ビキニ環礁で行われたキャッスルブラボー実験では36kmのキノコ雲ができる程の爆発です。ここまでの爆発であればまき散らされた塵はジェット気流にのって世界各地に降り注ぐ訳でして、、その塵に付着したプルトニウムも世界にまんべんなく行き渡ったでしょう。ビキニ環礁の実験で被曝した第五福竜丸は非常に有名ですが、彼らは爆心地から160kmも遠くで操業していたそうです。風向きが悪かったせいでヨウ素をたっぷり含んだ死の灰を浴びてしまい、平均2Sv(2000mSv、200万μSv)の被曝をしたと言われています。これを福島原発の3号機の爆発と比較すれば、核実験による爆発の威力という物が推し量れるでしょう。