2012年09月20日

福島原発沖とセラフィールド沖の海洋汚染比較

前の投稿で福島沖の海洋汚染に関して投稿をしようと考えていると言いながら、随分時間が経ってしまいましたが、ここに来て比較対象として適した情報を幾つか得ることができましたので書いていこうかと。今回比較対象にしようと思うのは英国西海岸のセラフィールドで60〜80年代まで原発の「通常業務」として放射能を海に投棄しておったとんでもない時期がございまして、、それによる海洋汚染と比較しようということです。英国セラフィールドの汚染資料としては以下の二つを使いました。

↓全世界における放射能の海洋汚染に関する資料  「IAEA-TECDOC-1429」
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/TE_1429_web.pdf

↓セラフィールド沖の放射能汚染に関する資料 「The environmental impact of the Sellafield discharges」
http://homepage.eircom.net/~radphys/scope.pdf

セラフィールドで垂れ流された放射能の総量ですが、上記資料scope.pdfのp2から抜粋して、以下の表に福島、チェルノブイリ、セラフィールド、そして過去の米ソ中等による核実験の総計(グローバルフォールアウト)を比較しました。チェルノブイリと福島の総量は前のエントリーと同じ資料を使っています。

https://docs.google.com/spreadsheet/ccc?key=0Ai4-DtUU3oRmdHcxVk9GaFUzSE15UHd4SWRXRTRIRnc&usp=sharing

まあ何というか、凄まじい垂れ流しようでして、、超ウラン元素に関してはチェルノブイリ以上の垂れ流しをアイリッシュ海にしていたとは今まで自分も全く知りませんで、、プルトニウム嫌いの人が見たら卒倒しそうな放出量になっています。実際にここで取れる貝類のプルトニウム濃度は現在でも数十Bq/kgあるそうでして(参照 「The environmental impact of the Sellafield discharges」p16)、福島周辺の土壌から数Bq/m2のプルトニウムが検出されても騒いでいる人もいる訳ですから、そういう人はアイリッシュ海の海産物は絶対に食べられないかと、、。で、福島沖の海洋汚染の実測データとセラフィールド沖のデータをどう付き合わせたもんだか色々資料を漁ったのですが、セシウム137をベースに表層水の汚染濃度の比較するのが結局の所一番都合が良いと考えまして作ったのが以下の図です。

まずはセラフィールド沖の汚染に関してはTECDOC1429のp121の1976-1980の図を抜粋させてもらい、以下にこの濃度図を踏襲した形で自分の作った福島沖2011/8-9月の汚染図をほぼ同縮尺で載せました。
SFiea.jpg

同縮尺だと余りにも小さいので拡大したのが以下の図です。以下の資料から実測濃度を抜粋し、最初に図の○の中にセラフィールドと同じ濃度色を割り当て、その後周辺を大まかに色づけしました。
文科省海域モニタリング2011/11/17発表資料
文科省・環境省・海上保安庁モニタリング資料

pacific8a.jpg

事故直後汚染水という形で原発港内から流れ出たというよりは、大気中に放出されたセシウムが太平洋に広く降下して8〜9月ではその影響で汚染地域が太平洋側に広がっているように思えます。ちなみに大気中からの降下と判断した理由として事故直後の4月にこの地図からはみ出るほど遙か沖にホットスポットのように1000Bq/m3の場所が表れた点が挙げられます。(参照→気象庁調査資料 ちなみにここで採取されたデータをGoogleMapに高濃度部分のみプロットしましたが、線引きをするには余りにも情報が少ない為、上下のような図は作りませんでした)。その後降下物として海面に落ちた放射性物質は攪拌して急速に濃度を下げ、遠洋においては2月の時点では以下のように薄まっています。近海の濃度はそれなりに残っている訳ですが、これは原発サイトからのものと同時に陸地に沈着したセシウムが河川を伝ってじんわり近海の濃度を高めているように見えます。とはいえ去年の8月時点よりいずれも濃度は低下傾向ですので、このまま数年で薄まっていくことが予想されます。

文科省海域モニタリング2012/4/23発表資料
文科省及び東電海域モニタリング2012/6/1発表資料

PacificS.jpg

ここでセラフィールドと比較して、何故こんなに簡単に薄まるのか疑問に思う人がいるかもしれません。セラフィールドの垂れ流したセシウム137の量は約30年の年月を掛けて福島沖に放出された3倍近くということですが、この実測データを見る限りあまりにもセラフィールド沖と北海の汚染が長期に渡って続いているように思えます。セラフィールドに於ける時間変化はTECDOC1429 p121-122から抜粋すると

SF.jpg

上のようになり、80年代半ばを境に通常業務としての垂れ流しを大幅に抑制した訳なのですが(参照 TECDOC1429 p10)それでも北海やアイリッシュ海の汚染が消える様は福島沖と比較して緩慢です。(余談ですが 86年以降はチェルノブイリによるフォールアウトでバルト海が汚染されているのが解ると思います)

この理由はアイリッシュ海、北海の平均水深が一番の理由だと思われます。GoogleMapの衛星写真にして、太平洋と比較すると欧州の北西には広大な大陸棚の浅瀬が広がっているように見えます。この辺りの水深は平均90m前後といわれており、非常に浅い訳です。翻って太平洋は平均水深4000mですから、面積(北海75万km2 太平洋1億5千万km2、太平洋が200倍)で比較すると大した違いが無くても(それでも太平洋のほうが遙かに広いですが)体積(北海9万km3 太平洋7億km3 太平洋が7800倍)で比較すると水たまりと湖ほどの違いになります。故に攪拌によって放射能が薄まる度合いも段違いということになります。

※上記の汚染図に関してですが、2014年11月(JAEA)と15年1月(規制庁)のデータを元にここ4年間の変遷を新たに作りましたので参考にしてください。(2015年2月)

Pacific2011-14.jpg

ちなみに太平洋においてはかつて福島やセラフィールドよりも遙かに深刻な放射能汚染を経験しています。それはビキニ環礁等の南太平洋に於ける米国の核実験による放射能汚染でして、、ここではセラフィールドの約8倍近い(福島の20倍以上)341PBqのセシウム137が放出されたそうです。ストロンチウム90に至っては224PBqとチェルノブイリの実に20倍以上(福島の大気中放出の2000倍弱)もの放出があったということで、太平洋は激甚な放射能汚染に曝されたことになります。(放射性物質の総量に関しては以下のサイトを参照にしました→一瀬氏の運営するブログ「カクリ論」)この核実験による海洋汚染の経過についての研究は良くされており、2004年に出された以下の研究などが非常に参考になります。

「海洋環境放射能による長期的地球規模リスク評価モデル(LAMER)」

この中に太平洋に於ける表層水のセシウム137汚染の挙動が描かれていますので抜粋しますが、この図を見る限り、たった10年で濃度の急激な低下が起こる様が見て取れる点で福島沖の拡散の早さなどが得心いくかと思われます。

pacific.jpg

今回福島で放出された量は核実験と比較するとセシウム137に絞っても数十分の1である点を考えても、結局は太洋の攪拌能力によって、少なくとも陸地から10km以上の遠洋では過去の核実験で海水に溶けた分のバックグラウンドにここ数年で近づき、見分けが付かないようになると思われます。現在は海底土に沈着した放射性物質が再浮遊して濃度を高めることもあるでしょうが、結局海の中というのは自然のままで常に除染作業をやっているようなものですので、結局の所放っておいても濃度は下がり続けるのだと思います。故に海洋の心配をするならば地上に沈着してしまった放射性物質をどうするか考えるほうが遙かに建設的であろうかと、、、

またストロンチウム90の汚染について、以前のエントリーでも書いた通り、汚染水に含まれる度合いが大気中に放出された度合いより大きいという事で非常に海産物の汚染が心配されたのですが、それさえも過去の核実験で放出された量、そしてバックグラウンドを考慮すると、福島事故前、核実験によるストロンチウムを心配していないのであれば、別に心配する程の量は出てこないという事になるのではないかと、、理由は原発事故で大気中に放出されたセシウム137とストロンチウム90の比率は100:1とも1000:1とも言われ非常に希薄である点、海洋汚染が大気中から降下したものが殆どである点、原発サイトから垂れ流された分の比率はCs137:Sr90で10: 1くらいでストロンチウムの比率は大気放出のものよりも高いが、核実験によって放出された比率はCs137:Sr90で3:2と非常に高くバックグラウンドにセシウムよりも早く到達してしまう事が予想される点などです。

ここで過去の核実験やセラフィールドなどの垂れ流し、チェルノブイリの影響などで各海洋において攪拌した放射性物質をバックグラウンドと言いましたが、それがそれぞれの海洋においてどの程度の違いがあるかを書いておきます。TECDOC1429のP138-141までに記載されているもので、2000年の調査ということみたいです。で、その中で主要な海を抜き出して比較したのが以下の表です。


単位 セシウム137,ストロンチウム90(mBq/L = Bq/m3) プルトニウム239,240 (μBq/L = mBq/m3)
注意 ※プルトニウムは非常に希薄な為μBq/Lと、セシウムなどの1000分の1の単位を使っています。

まあセラフィールド垂れ流しの影響でアイリッシュ海だけ突出したバックグラウンドになっている訳ですが、、それを差し置いても普通に世界中の海にはある程度の濃度でこれらの放射性物質は存在するということを認識するべきかと思います。特に現在福島事故のお陰で非常にセンシティブな調査がされている訳なのですが、このバックグラウンド値というものを全く勘案せずに、検出されればそれが福島由来と大騒ぎする節がありますが、、これらの数値を頭に入れておくことで事故前とどれくらい違うのか、各国とどれくらいの違いがあるのかという指標になるかと、、、ちなみに福島事故の影響で太平洋の値がどの程度変化するかですが、セシウム137で過去のビキニ環礁等の水爆実験の数十分の1という規模ですから、現在の2.4Bq/m3という数値が精々2.5Bq/m3とかに上がる程度かと考えられます。もちろん攪拌には時間がそれなりに掛かり、それは上記の核実験による攪拌と同じような挙動になるのでしょうが、いずれにせよ福島原発近海でもアイリッシュ海やバルト海より薄まるのは時間の問題かと思われます。上記の今年(2012年)の2月の時点の汚染濃度図を見る限り、現在のアイリッシュ海と同じオレンジ色の濃度の部分はいわきから南相馬近海までに限定されている点をみれば、その薄まり方は明白です。ましてやこれはセシウム137だけにほぼ絞られ、ストロンチウム90やプルトニウムに至っては過去の核実験によってまき散らされたものにすぐに埋没するほど微々たる量でしょうから、問題にならないと考えて宜しいかと。

以上の事を勘案すると、魚介類に関しては近海(特に河川の河口付近は高くなる恐れはあると思います)の底魚や貝類じゃないかぎり、放射性物質の蓄積は福島事故前のバックグラウンドレベルに近づくのは自明であろうかと考えられます。それにしても何というか、、、ここの所色々目に入る放射能関連のニュースなり、ツィートなりというものは、余りにもセンセーショナリズムに囚われすぎているように感じてなりません。例えばGoogleの画像検索の「海洋汚染」で表れるASRの有名なシミュレーション画像ですけど、、実測ではないただのシミュレーション画像で、しかもBq/m3といった表示も記載されていない学術的にそれ程意味のないあの手の画像に踊らされて、太平洋の魚はもう食べられないと嘆いてみたり、色々情報が一人歩きするのも非常に問題なんですが、、過去の核実験のバックグラウンドやその他放射性物質をどれほど自分が取り込んでいたのか等の比較知識がある訳ではないのに、福島事故後になって初めてセンシティブな調査をして検出されればそれが過去の大気中核実験由来か福島由来かなど全て棚上げにして大騒ぎをするというのも大いに問題かと思います。

自分は子供の頃にドイツのハンブルグに住んでおりまして、、70年代のセラフィールドによる北海汚染を見る限り、まあ今の福島沖で取れている魚よりも酷い汚染のものを口にしていたんだな〜、などと考えると、ちょっと今の騒ぎがバカバカしく感じられるようになってしまいまして、、、個人的には過剰すぎる規制をしている事自体大きな間違いなんじゃないかと思うようになってきました。もちろんこれは個人的考えではあるのですが、、、ただ人間というものは汚染の尺度が数値で出ると、それを0に近づけたくなるのは性なのでしょうが、、例えば100Bq/kgの規制なども、この事故が起こる前は360Bq/kg(しかも現在のようなセンシティブな検査機器が使う訳でもなく検査も非常に希薄にされていた)という基準だった事を考えると、余りにもおかしいのではないかと思うようになりまして、、、次のエントリーでは内部被曝について大気中核実験時代から福島事故後までの比較、変遷などを書いてみようかと、、
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2011年10月17日

チェルノブイリとの汚染比較 プルトニウム239、240について

■プルトニウム239、240について

こちらも当初から問題視されていたプルトニウム汚染ですが、大分資料が出来てきましたので掲載します。

pu239-240.jpg
↑クリックすると拡大します。

参考資料
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_FukushimaNPP/0002/5600_0930.pdf (P8 Fukushima)
http://www-pub.iaea.org/mtcd/publications/pdf/pub1239_web.pdf (P147 Chernobyl)

今回文科省の調査結果を見る限り、チェルノブイリにおける最低ラインの閾値である100Bq/m2以上の汚染が見あたらなかった為、上のような図になりました。

そもそもプルトニウムは冷戦時代の大気圏核実験によって降下したものもあり、日本では最高で220Bq/m2を検出した場所もあるそうです(文科省資料参照)。今回の調査においては、最高値は15Bq/m2と、大気圏核実験による最高値よりも低い結果となりました。科学的にこれらが福島産のものかどうかというのは、プルトニウムの比率によって、どうもそうらしいと分かるレベルらしく、では健康への影響はという問いには、核実験によって降下したもの以上の健康的影響はないと言って良いかと思います。

「プルトニウム2万3000倍」のエントリーにおいて、今回の福島原発における放射性核種の放出量のシミュレーション値が書いてありますが、ストロンチウムもそうですが、どうもこのシミュレーション値よりも実際の陸地への沈着汚染が低いような感じがします。例えばストロンチウム90は福島ではシミュレーション上は140兆ベクレルも放出している訳でして、チェルノブイリのプルトニウム239、240の合計値である30兆ベクレルより多い訳です。であるならば、少なくともストロンチウム90の地図はチェルノブイリのプルトニウム239,240地図よりも重い汚染地図になっても良さそうなものです。チェルノブイリのプルトニウム地図では上記のように40万Bq/m2以上の地域もあります。

これまた素人考えですが、恐らくこの違いは炉が爆発したか、しないかの違いなのではないかと思います。チェルノブイリの南西に見られる所謂レッドフォレストと呼ばれる高濃度汚染地域は爆散した燃料が飛び散った場所と言われており、ガスになって浮遊したというよりも、多くの放射性物質が爆発の影響で放物線を描いて飛んできたのでしょう。特に上記のプルトニウムの汚染地域をよく観察すれば顕著にその特徴が出ています。原発から約数キロの範囲であるレッドフォレストは40万Bq/m2以上という高濃度汚染地域なのに比較してほんの20kmも南西に行けばたった100Bq/m2以下の地域になり、比率4000分の1という非常に顕著な落差が現れてます。セシウムやストロンチウムに関しては2000万Bq/m2から4万Bq/m2以下というように比率は500分の1であり、また広範囲な地図になればセシウムやストロンチウムはプルトニウムよりも遙か遠くに飛んでいることがわかります。逆に以下の地図に表すようにプルトニウム3700Bq/m2以上の地域は30km圏内にほぼ収まり、セシウム等のように遠い場所にホットスポットを作らなかったそうです。



福島のストロンチウムの飛散に関してはまず第1に、シミュレーション上の放出では計れない原発施設内での沈着、要は建屋の壁に沈着したり等でシミュレーションの値よりも激減し、そしてチェルノブイリにおけるプルトニウムの地図と全く違い、非常に薄く広く飛んだものと考えるのが自然かもしれません。プルトニウムの飛散に関してもガスと一緒に運良く飛んだものもあるでしょうが、それでも殆どがふるい落とされて、最終的には核実験時に降下したものと見分けが付かない程の濃度しか飛ばなかったというのが真相ではないでしょうか。

蛇足になりますが、よく「プルトニウムは飛ばないなんて嘘だ!核実験で飛んできたじゃないか!」という論を見掛けますが、、核実験の爆発力はチェルノブイリの爆発や福島の水素爆発などとは比較にならない程のものです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%83%90

ノバヤゼムリャで行われたツァーリボンバ(皇帝の爆弾)では中間圏である高度60kmのキノコ雲が、ビキニ環礁で行われたキャッスルブラボー実験では36kmのキノコ雲ができる程の爆発です。ここまでの爆発であればまき散らされた塵はジェット気流にのって世界各地に降り注ぐ訳でして、、その塵に付着したプルトニウムも世界にまんべんなく行き渡ったでしょう。ビキニ環礁の実験で被曝した第五福竜丸は非常に有名ですが、彼らは爆心地から160kmも遠くで操業していたそうです。風向きが悪かったせいでヨウ素をたっぷり含んだ死の灰を浴びてしまい、平均2Sv(2000mSv、200万μSv)の被曝をしたと言われています。これを福島原発の3号機の爆発と比較すれば、核実験による爆発の威力という物が推し量れるでしょう。
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チェルノブイリとの汚染比較3 ストロンチウム90について

■ストロンチウム90について

事故当初から非常に憂慮されていたストロンチウム90についてですが、文科省から原発周辺の調査が上がってきました。セシウム137にならい原発近郊地図における比較を作成しました。

Sr90.jpg
↑クリックすると拡大します

参考資料
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_FukushimaNPP/0002/5600_0930.pdf (P9 Fukushima)
http://www-pub.iaea.org/mtcd/publications/pdf/pub1239_web.pdf (P146 Chernobyl)

文科省の調査を見る限り、今回の事故におけるストロンチウムの放出は非常に限定的と言えます。最高濃度の場所で双葉町付近の5700Bq/m2ということでチェルノブイリの最低の閾値である20000Bq/m2(20kBq/m2)には届いていない点で地図比較にならない程です。もっとも原発構内や建屋周辺ではある程度高い場所もあるかもしれませんが、現時点では書き加える材料がありません。また文科省のデータは現在全ての数値を入力した訳ではありませんが、GoogleMapに数値を落としておきましたので、こちらも参考にしてください。


より大きな地図で ストロンチウム90地図 を表示

図を見る限り、チェルノブイリにおいてはセシウム137、ストロンチウム90が同じような場所を汚染しているのに対して、福島においては随分違う場所が汚染されている点に気づきます。福島の場合はセシウム137は原発近郊では最初南と西を汚染し、少し離れて飯舘村方面の北西へ延びる汚染に対して、ストロンチウム90は最もセシウム汚染の酷い夫沢や原発真西の国道近辺ではそれ程高くなく、逆にセシウム汚染が比較的少なかった原発直近の北方面の双葉町役場傍や南相馬方面で比較的高い状況になっています。

以下は素人なりの推論ですが

http://www.meti.go.jp/press/2011/08/20110826010/20110826010-2.pdf

シミュレーションによって出された各号機における放射性物質の放出量を見る限り、今回のセシウム汚染の9割近くを放出した2号機のストロンチウム放出量が比較的少なく、14日に水素爆発した3号機のストロンチウム放出量が多い点に目がいきます。割合としては2号機が3割、3号機が6割といったところでしょうか。

また今回の事故とチェルノブイリを比較するとチェルノブイリが炉その物が崩壊、爆発したのに対して、福島においては汚染の中心物質であったヨウ素やセシウムはベント、あるいは格納容器や抑制室の機密漏れによって主に排気筒から高濃度の放射性物質として放出された違いがあるのではないかと、そしてストロンチウムに関しては水に溶けやすい性格であるため、か細くでも一応は行われていた注水によって大部分が水溶化し、大部分は汚染水に溶け、一部は蒸気になって建屋に充満したのではないでしょうか。そして3号機の爆発によって比較的多く飛び散り、主に北側を汚染することになった故に、セシウムとの汚染分布の違いになったのではないかと。まあ素人の戯れ言ですが、、

いずれにせよチェルノブイリと比較すれば濃度的にはセシウムなどとは比べ物にならない程低い濃度の汚染ということになるかと思います。ちなみにこの汚染が一体どの程度のものなのかに関しては冷戦期の大気圏核実験で各地に降下したストロンチウム90の資料があります。

http://psv92.niaes3.affrc.go.jp/vgai_agrip/sys_top.html

こちらのサイトなどで調べる限りkgあたり30Bq程度の汚染は普通にあったようです。m2に変換すると一体どれくらいになるのかはハッキリしませんが、20倍だとしても600Bq/m2、良く言われる50倍や65倍という変換係数を使えば(もっともこの変換係数は自分としては少々過大だと思いますがが、、)1500Bq/m2から2000Bq/m2になる訳でして、最高濃度の汚染地域で、大気圏核実験が行われていた時代の2〜10倍といった所です。またこれ程の汚染地域ではセシウム汚染の方が遙かに問題が大きい為、農作物が作られることはないでしょう。セシウム汚染との比較において、ここまで大きな差が付く点で、現状陸地においては対策核種に入れる必要はないと考えます。(セシウム対策をすれば大体ストロンチウムの対策にもなる)

ストロンチウムに関しては問題なのはむしろ海洋汚染の方だと思います。水溶性のストロンチウムは注水によって水に溶けて汚染水になったと言いましたが、4月に海洋に漏れだした汚染水は非常に気がかりです。どれだけのストロンチウムが含まれていたかは定かではありませんが、東電の6月発表の資料で5月に採取した漏洩した汚染水のピット近くの海水分析結果が載っています。

http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110612h.pdf

これを見る限り対セシウム比においてもかなりの比率でストロンチウムが汚染水に溶けていることが分かります。もちろんこの調査だけではどの程度の汚染なのかは未知数ですが、そのためにも魚介類の調査などをしっかりやるのが得策でしょう。
posted by mockmoon at 21:26| Comment(229) | 記事